建設業許可の取得に違法な裏ワザはありませんが、経営経験5年未満や預金500万円未満でも、正規の制度を活用して取得できる場合があります。
「経営経験が3年しかない」「実務経験が10年に届かない」「500万円を用意できない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、2023年7月の制度改正、経営管理体制の代替ルート、財産要件、申請費用や審査期間まで、建設業許可を取得するための具体的な方法を分かりやすく解説します。
建設業許可取得に裏ワザはある?まず確認したい5つの条件
建設業許可には、法律で定められた条件を無視して取得できる抜け道はありません。ただし、経営経験や技術者の資格、財産要件には複数の正規ルートが用意されています。
2026年4月1日更新とされるマネーフォワード クラウドの解説記事でも、違法な方法と法律で認められた要件緩和を区別する重要性が紹介されています。
同記事では、社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、宅地建物取引士の資格を持つ柴田充輝氏が監修者として紹介されています。
建設業許可を検討する際は、一般的に知られている「5年」「10年」「500万円」という数字だけで判断しないことが大切です。
建設業許可が必要になる工事はいくらから?
建設業法第3条と建設業法施行令第1条の2では、許可を受けずに請け負える軽微な建設工事の範囲が定められています。
工事の種類 許可が不要となる軽微な工事の基準
建築一式工事以外 1件の請負代金が500万円未満
建築一式工事 1件の請負代金が1,500万円未満
建築一式工事の例外 請負代金にかかわらず、延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
例えば、税込600万円の内装仕上工事を請け負う場合は、原則として建設業許可が必要です。
一方、税込400万円の内装工事であれば、軽微な建設工事として許可が不要になる場合があります。
ただし、請負代金は消費税を含めた金額で判断します。
注文者が材料を提供する場合には、その材料の市場価格や運送費を加えて判断する必要があります。
また、許可を避けるために一つの工事を複数の契約へ分割しても、正当な理由がなければ原則として請負代金を合算します。
金額だけでなく、工事全体の内容を確認することが重要ですね。
一般建設業許可の取得条件は5つ
一般建設業許可では、建設業法第7条・第8条などに基づき、主に次の5つの条件を確認します。
取得条件 主な確認内容
経営業務の管理体制 必要な経営経験や補佐体制があるか
営業所技術者等 対象業種の資格や実務経験を持つ人がいるか
誠実性 請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれがないか
財産的基礎 自己資本500万円以上などの条件を満たすか
欠格要件 法律で定められた欠格事由に該当しないか
このほか、健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、法令上の加入義務がある場合には適切な加入が求められます。
ここで知っておきたいのが、すべての条件を事業主本人が一人で満たす必要はないという点です。
例えば、本人が営業所技術者等の資格を持っていなくても、必要な資格や経験を持つ人を適切に配置することで要件を満たせる場合があります。
ただし、名前だけを借りることは認められません。
実際の勤務状況や役割が法律上の条件に合っている必要があります。
一般建設業と特定建設業は何が違う?
建設業許可には、一般建設業許可と特定建設業許可があります。
特定建設業許可は、発注者から直接請け負った工事について、一定額以上の下請契約を締結する場合に必要です。
2025年2月1日から、特定建設業許可が必要となる下請代金の基準は、原則5,000万円以上、建築一式工事では8,000万円以上に引き上げられました。
これは、一つの元請工事について締結する下請契約の総額で判断する基準です。
自社が下請業者として大きな工事を受注する場合、請負金額が高いという理由だけで特定建設業許可が必要になるわけではありません。
また、特定建設業では、技術者や財産的基礎について一般建設業より厳しい条件があります。
この記事では、小規模な建設会社や一人親方が検討することの多い一般建設業許可を中心に説明します。

建設業許可の正規ルートとは?実務経験10年を短縮する方法
一般建設業許可の営業所技術者等には、原則10年以上の実務経験によるルートのほか、指定学科の卒業歴や国家資格、技術検定の合格歴を活用するルートがあります。
特に2023年7月1日の制度改正では、一定の技術検定第一次検定合格者について、対象業種の実務経験要件が緩和されました。
ただし、すべての資格や業種に適用されるわけではありません。
国家資格がなくても実務経験10年以上で取得できる?
一般建設業許可では、許可を受けたい業種について原則10年以上の実務経験があれば、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
例えば、内装仕上工事を10年以上担当してきた方は、その経験を証明することで内装仕上工事業の技術者要件を満たせる可能性があります。
ただし、建設会社に10年間在籍していたことだけでは十分とは限りません。
対象業種の工事に実際に従事していた期間を確認できることが重要です。
証明資料としては、工事請負契約書、注文書、請求書などが利用される場合があります。
また、複数業種の実務経験を証明する際には、同じ期間を重複して計算できない場合があります。
対象業種と経験期間の対応を整理しておきましょう。
指定学科を卒業すると実務経験は3年・5年になる?
対象業種に対応する指定学科を卒業している場合、一般建設業許可の技術者要件に必要な実務経験が短縮されます。
学歴・条件 必要な実務経験
大学・高等専門学校の指定学科卒業 卒業後3年以上
高等学校・中等教育学校の指定学科卒業 卒業後5年以上
指定学科による短縮を利用しない場合 原則10年以上
例えば、建築関係の指定学科を大学で卒業し、対応する業種の工事を卒業後3年間経験していれば、技術者要件を満たせる場合があります。
ただし、建築系の学校を卒業しただけで、すべての建設業種に短縮が認められるわけではありません。
建築学、土木工学、電気工学などの指定学科と、許可を希望する業種の対応関係を確認する必要があります。
専門学校についても、課程や称号などによって別の取扱いがあります。
卒業証明書や学科を確認できる資料を用意し、申請先の基準と照らし合わせましょう。
2023年7月1日の制度改正で何が変わった?
2023年7月1日に施行された建設業法施行規則の改正では、一定の技術検定第一次検定合格者について、営業所技術者等となるための実務経験要件が緩和されました。
対象となる検定区分と業種の組み合わせでは、次の取扱いが認められています。
- 1級の第一次検定合格者:対象業種について合格後3年以上の実務経験
- 2級の第一次検定合格者:対象業種について合格後5年以上の実務経験
この制度は、第一次検定の合格者を一定の指定学科卒業者と同様に扱う仕組みです。
ただし、第一次検定に合格しただけで、直ちに営業所技術者等になれるわけではありません。
対象業種に対応する検定区分と、合格後の実務経験が必要です。
例えば、1級土木施工管理技術検定の第一次検定に合格した方は、対象となるとび・土工工事業などについて、合格後3年以上の実務経験によるルートを検討できます。
2級土木施工管理技術検定の第一次検定合格者についても、対象となる業種では合格後5年以上の実務経験によるルートがあります。
一方、すべての建設業種が対象になるわけではありません。
この緩和では、次の7業種が対象外とされています。
- 土木一式工事業
- 建築一式工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
例えば、電気工事業の許可を取得したい方が電気工事施工管理技術検定の第一次検定に合格していても、この緩和制度だけで電気工事業の要件を満たすことはできません。
ただし、施工管理技士などの資格については、従来から認められている別の資格ルートがあります。
第一次検定合格者向けの緩和と、資格そのものによる技術者要件は区別する必要があります。
国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」や、申請先が公表する営業所技術者等の資格一覧で、検定区分と対象業種を個別に確認しましょう。
実務経験8年の一人親方はどうすればよい?
対象業種の実務経験が8年間の一人親方は、10年以上の実務経験だけを利用するルートでは、原則として年数が不足しています。
しかし、指定学科の卒業歴や対象資格があれば、別のルートを検討できる場合があります。
例えば、対象業種に対応する大学の指定学科を卒業し、その後8年間の実務経験がある方なら、卒業後3年以上という条件を満たせる可能性があります。
また、対象となる技術検定の第一次検定に合格している場合は、合格後の経験年数によって2023年の緩和制度を利用できることがあります。
ただし、合格前の経験をそのまま合格後の経験として数えることはできません。
例えば、8年間の実務経験があっても、1級第一次検定に合格したのが1年前であれば、合格後3年以上という条件には届きません。
このように、単純な経験年数だけでなく、卒業日・資格取得日・実務経験の開始日を並べて確認することが大切ですね。

経営経験5年未満でも建設業許可を取得できる?
経営経験が5年未満でも、一定の常勤役員等の経験と直接補佐者による体制など、法律で認められた別の条件を満たせば建設業許可を取得できる場合があります。
ただし、経営経験が3年あれば誰でも取得できるという意味ではありません。
建設業法第7条第1号と建設業法施行規則第7条に基づき、役職、経験期間、担当業務などを確認する必要があります。
経営業務の管理体制にはどんなルートがある?
経営業務の管理体制には、主に次のようなルートがあります。
取得ルート 主な条件
基本ルート 建設業に関する5年以上の経営業務の管理責任者としての経験
執行役員等の経験 建設業に関する5年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位で、経営業務を管理した経験
経営業務の補佐経験 建設業に関する6年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位で、経営業務を補佐した経験
直接補佐者を置く体制 一定の常勤役員等の経験と、財務管理・労務管理・業務運営を直接補佐する体制
ここで注意したいのは、6年以上の補佐経験によるルートと、直接補佐者を置くルートは異なる制度だという点です。
6年以上の補佐経験によるルートでは、建設業の経営業務について、経営者に準ずる地位で実際に補佐していた経験が必要です。
単に現場責任者として6年間働いていたことだけでは、要件を満たすとは限りません。
直接補佐者を置くルートの条件は?
直接補佐者を置くルートでは、一定の経験を持つ常勤役員等と、財務管理・労務管理・業務運営を直接補佐する人を組み合わせて経営管理体制を整えます。
常勤役員等については、主に次の2つの経験ルートがあります。
1つ目は、建設業に関する2年以上の役員等経験を含み、建設業の役員等または建設業以外の役員等として通算5年以上の経験があるルートです。
例えば、建設会社の役員を3年間、建設業以外の会社の役員を2年間務めていた方は、経験内容が条件に合致すれば検討対象になります。
2つ目は、建設業に関する2年以上の役員等経験を含み、建設業の役員等または役員等に次ぐ職制上の地位で、財務管理・労務管理・業務運営を担当した経験が通算5年以上あるルートです。
こちらでは、建設業における役職や担当業務の内容が重要になります。
さらに、直接補佐する人には、申請する建設業者等において、財務管理、労務管理、業務運営の各業務について原則5年以上の経験が求められます。
3つの業務を一人が担当することも、複数人で分担することも可能です。
ただし、補佐者の経験は、単に別会社で管理職を務めていたというだけで認められるものではありません。
申請する建設業者等での経験や常勤性など、所定の条件を満たす必要があります。
また、常勤役員等と直接補佐者は、実際に経営管理を行う体制でなければなりません。
経営経験3年の事業主なら取得できる?
建設会社の役員経験が3年間の事業主でも、ほかの役員経験や直接補佐者の配置状況によっては、建設業許可を取得できる可能性があります。
例えば、次のようなモデルケースを考えてみましょう。
建設会社で役員を3年間務め、その前に建設業以外の会社で役員を2年間務めた方がいるとします。
この場合、建設業の役員経験2年以上を含む通算5年以上の役員等経験という条件を検討できます。
さらに、申請する建設会社において、財務管理、労務管理、業務運営の各業務を5年以上経験した直接補佐者がいる場合は、補佐体制によるルートを検討できる可能性があります。
一方、建設会社を3年間経営した経験しかなく、ほかの役員経験も補佐体制もない場合は、このルートの条件を満たすことは難しいでしょう。
また、建設業以外の会社での役員経験があれば、どのような役職でも自動的に認められるわけではありません。
過去の登記事項証明書、組織図、職務分掌規程、担当業務を確認できる資料などを用いて、法令上の条件に合うか判断する必要があります。
私は、この制度を単純な「経営経験5年の短縮制度」と考えないことが重要だと感じています。
実際には、事業主一人の経験だけでなく、会社全体として必要な経営管理体制を備えているかを確認する仕組みだからです。
建設業許可は500万円なくても取れる?財産要件を解説
一般建設業許可では、500万円以上の現金を常に保有している必要はありません。
建設業法第7条第4号では、主に次のいずれかを満たすことが財産的基礎の条件とされています。
- 自己資本の額が500万円以上ある
- 500万円以上の資金調達能力がある
- 許可申請の直前5年間、許可を受けて継続して建設業を営んだ実績がある
3つ目は、主に既存の許可業者が更新する場合に関係する条件です。
新規取得では、自己資本または資金調達能力の確認が中心になります。
資本金500万円未満でも申請できる?
法人の場合、資本金が500万円未満でも、自己資本が500万円以上あれば財産要件を満たせる可能性があります。
自己資本は、基本的に貸借対照表の純資産合計に相当する金額です。
例えば、資本金300万円の法人でも、利益剰余金などを含む純資産が600万円あれば、自己資本の条件を満たせる場合があります。
反対に、資本金500万円の会社でも、累積赤字によって純資産が300万円になっていれば、自己資本500万円以上の条件は満たしていません。
つまり、資本金と自己資本は別のものなのですね。
自己資本300万円の法人はどうすればよい?
自己資本が300万円の法人は、自己資本500万円以上という条件には届きません。
しかし、500万円以上の資金調達能力を証明できれば、別のルートで財産要件を満たせる場合があります。
例えば、自己資本が300万円でも、金融機関が発行する預金残高証明書によって、基準日に500万円以上の預金があることを確認できれば、資金調達能力の証明として認められる可能性があります。
また、申請先の取扱いによっては、金融機関の融資証明書などが利用できる場合もあります。
ただし、預金残高証明書の基準日や有効期間は、申請先の行政庁が定める取扱いを確認する必要があります。
例えば、東京都の基準をそのまま別の県の申請に当てはめることはできません。
また、実際の資金を適法に借り入れることと、架空の残高証明書を作成することはまったく異なります。
虚偽の書類による申請は認められません。
私は、許可取得のための資金と、許可取得後に必要な運転資金を分けて考えることが大切だと思います。
建設業では、材料費や外注費などの支払いが工事代金の入金より先になる場合があります。
財産要件を満たすために無理な借入れを行い、工事を始める資金が不足してしまっては本末転倒ですね。
個人事業主の自己資本はどう計算する?
個人事業主の場合、法人とは異なる建設業財務諸表の様式で自己資本を確認します。
個人用の建設業財務諸表では、一般に次の勘定科目を使って自己資本を計算します。
自己資本=期首資本金+事業主借勘定+事業主利益-事業主貸勘定
例えば、建設業財務諸表に次の金額が計上されているとします。
勘定科目 金額
期首資本金 300万円
事業主借勘定 100万円
事業主利益 200万円
事業主貸勘定 50万円
計算上の自己資本 550万円
この例では、300万円+100万円+200万円-50万円=550万円となります。
ただし、これは各勘定科目が建設業財務諸表の様式に従って正しく計上されていることを前提とした計算例です。
所得税の確定申告書にある数字を、そのまま当てはめればよいとは限りません。
また、財務諸表の作成方法や確認資料は申請先によって取扱いが異なる場合があります。
国土交通省の建設業法施行規則に定められた財務諸表の様式と、申請先の手引を確認することが大切です。

建設業許可の申請方法は?費用・審査期間・必要書類
建設業許可をスムーズに取得するには、許可業種と申請先を決めたうえで、経営経験、技術者要件、財産要件を証明する資料を準備することが重要です。
申請先や手数料、審査期間は、都道府県知事許可と国土交通大臣許可で異なります。
都道府県知事許可と国土交通大臣許可の違いは?
建設業許可の申請先は、営業所の設置状況によって決まります。
許可の種類 主な条件 申請先
都道府県知事許可 1つの都道府県内だけに建設業の営業所がある 都道府県知事
国土交通大臣許可 2つ以上の都道府県に建設業の営業所がある 国土交通大臣
例えば、東京都内だけに建設業の営業所がある会社は、原則として東京都知事許可の対象です。
一方、東京都と神奈川県の両方に建設業の営業所がある会社は、国土交通大臣許可の対象になります。
ここで注意したいのは、工事を行う地域と営業所の所在地は別だという点です。
東京都知事許可を受けた会社でも、法律上の条件を満たせば神奈川県や大阪府などで工事を施工できます。
全国で工事を行うために、必ず国土交通大臣許可が必要になるわけではありません。
建設業許可の申請費用はいくら?
一般建設業許可の新規申請では、知事許可と大臣許可で法定の申請手数料等が異なります。
申請区分 新規申請の法定費用
都道府県知事許可 9万円
国土交通大臣許可 15万円
これらは一般建設業許可または特定建設業許可の新規申請に関する基本的な金額です。
一般建設業と特定建設業を同時に新規申請する場合などは、別途計算が必要になります。
また、更新申請では一般的に5万円の手数料等がかかります。
このほか、登記事項証明書などの取得費用や、行政書士に申請を依頼する場合の報酬が発生することがあります。
行政書士への依頼費用は、事務所や申請内容、証明資料の複雑さによって異なります。
申請時の費用は変更される可能性があるため、最新の金額を申請先の公式案内で確認しましょう。
建設業許可の審査期間はどれくらい?
建設業許可の審査期間は、申請先や申請内容によって異なります。
国土交通大臣許可の新規申請では、標準処理期間としておおむね90日程度が目安とされる取扱いがあります。
一方、都道府県知事許可では、自治体ごとに標準処理期間が定められています。
例えば、自治体によっては新規申請の標準処理期間を30日程度としている場合がありますが、全国共通の期間ではありません。
また、標準処理期間は、すべての申請についてその日数以内に許可されることを保証するものではありません。
書類の補正や追加確認が必要になれば、さらに時間がかかる場合があります。
特に、経営経験や実務経験を過去の契約書類で証明する場合は、申請前の準備にも時間が必要です。
そのため、私は許可を取得したい日から逆算して、証明資料の確認を早めに始めることをおすすめします。
個人事業主・一人親方も申請できる?
個人事業主や一人親方でも、必要な条件を満たせば建設業許可を取得できます。
法人化が必須というわけではありません。
例えば、個人事業主として建設業を5年以上経営し、対象業種について10年以上の実務経験がある方は、経営管理体制と技術者要件の両方を本人が満たせる可能性があります。
ただし、それぞれの経験を客観的な資料で確認できる必要があります。
また、営業所技術者等には原則として営業所での常勤性が求められます。
現場の主任技術者等との兼任については、工事現場の場所や契約関係、連絡体制など、現行制度に基づく条件を確認する必要があります。
2024年12月13日には、建設業法改正に伴う技術者配置に関する制度変更も施行されています。
営業所技術者等が工事現場の技術者を兼ねられるかどうかは、単に近隣の現場であるという理由だけで判断できません。
個別の兼任条件について、国土交通省の現行ガイドラインと申請先の取扱いを確認しましょう。
個人事業主から法人化した場合は許可を引き継げる?
個人事業主が法人化しても、個人名義の建設業許可が自動的に法人へ移るわけではありません。
ただし、2020年10月1日に始まった建設業許可の事業承継制度によって、一定の条件を満たせば許可を承継できる場合があります。
この制度は、事業譲渡、合併、会社分割、相続などに対応しています。
個人事業主から法人へ事業を譲渡する場合も、事前認可による承継を検討できる可能性があります。
ただし、事業譲渡などでは原則として承継前に認可を受ける必要があります。
相続の場合は手続きが異なり、被相続人の死亡後30日以内に認可申請を行う制度が設けられています。
東京都の建設業許可の手引では、事業承継の事前認可申請について、承継予定日までに原則25開庁日を確保するよう案内されている例があります。
ただし、これは東京都の対象手続きに関する取扱いであり、全国共通の期限ではありません。
法人化を検討している方は、会社設立日や事業譲渡日を決める前に、許可の承継方法を確認することが重要ですね。
建設業許可の必要書類は?
建設業許可の申請では、申請書のほか、経営経験、技術者要件、財産的基礎、営業所などを確認する資料が必要です。
主な書類を整理すると、次のようになります。
書類 確認する内容
建設業許可申請書 申請者・許可業種
工事経歴書 過去の工事実績
常勤役員等に関する証明書 経営管理体制
営業所技術者等に関する証明書 資格・実務経験
財務諸表 財産的基礎
預金残高証明書 資金調達能力
登記事項証明書 法人の登記内容
健康保険等の加入状況に関する書類 社会保険の加入状況
このほか、営業所の写真、納税証明書、常勤性を確認する資料などが必要になる場合があります。
必要書類は、法人か個人事業主か、新規申請か更新申請かによって異なります。
東京都都市整備局の「建設業許可 手引、申請書類等」では、2026年9月10日更新とされる令和8年度の申請資料が案内されています。
また、静岡県では2026年9月14日付の「建設業許可の手引 Ver.12」が案内されています。
これらの更新日は、記事作成時に参照した情報に基づくものであり、本稿で各自治体の公開ページを再照合したことを示すものではありません。
実際に申請する際は、最新の手引と様式を確認してください。
申請書類を効率よく準備する順番は?
建設業許可の申請準備では、時間がかかる資料から集めることが重要です。
おすすめの順番は次のとおりです。
1. 取得したい許可業種と申請先を決める
2. 経営経験と技術者要件を確認する
3. 過去の契約書や工事記録を集める
4. 営業所や社会保険、常勤性を確認する
5. 財務諸表と資金調達能力を確認する
6. 申請日に合わせて有効期間の短い証明書を取得する
7. 申請先の最新の手引と照合して提出する
例えば、10年以上前の工事契約書は、保管場所を探したり、取引先に確認したりするため時間がかかることがあります。
一方、預金残高証明書は、申請日に近い基準日が求められる場合があります。
そのため、すべての書類を同じ日に集め始めるよりも、取得に時間がかかるものと、有効期間が短いものを分けて準備する方が効率的です。
また、建設業許可には電子申請の仕組みもあります。
ただし、電子申請を利用しても、経営経験や実務経験などの証明が不要になるわけではありません。

建設業許可取得で失敗しないための3つの実務ポイント
建設業許可を取得する際は、正規の取得ルートを確認するだけでなく、要件の不足と証明資料の不足を区別し、違法な申請を避けることが重要です。
私は、許可取得を急ぐほど、最初の確認作業に時間をかける価値があると考えています。
1. 条件不足と証明不足を分けて考える
建設業許可の申請で最初に確認したいのは、法律上の条件そのものが不足しているのか、それとも条件を証明する資料が不足しているのかという違いです。
例えば、対象業種の実務経験が8年間しかなく、資格や指定学科による短縮も利用できない場合は、技術者要件そのものが不足している可能性があります。
この場合は、対象資格の取得や必要な実務経験を積むことなどが対策になります。
一方、実務経験が10年以上あるのに過去の契約書が見つからない場合は、証明資料の不足が問題です。
この場合は、取引先に残っている注文書や契約関係書類を確認するなど、正規の方法で資料を集めることになります。
ただし、後から存在しなかった契約書を作成したり、工事内容を偽ったりすることは認められません。
私は、この2つを分けるだけでも、申請準備の無駄を減らしやすくなると考えています。
2. 3つのモデルケースで取得可能性を整理する
ここまで紹介した制度を、具体的な3つのケースで比較してみましょう。
モデルケース 不足している条件 検討できる正規ルート
建設会社の役員経験3年 基本ルートの経営経験5年 他の役員経験と直接補佐者を置く体制
実務経験8年の一人親方 原則10年の技術者経験 指定学科卒業、対象資格、2023年の緩和制度
自己資本300万円の法人 自己資本500万円 500万円以上の資金調達能力の証明
例えば、経営経験3年の事業主であれば、単にあと2年間待つ以外にも、過去の役員経験と補佐体制を確認する選択肢があります。
ただし、本人の経験と補佐者の経験が、それぞれ法定要件を満たす必要があります。
実務経験8年の一人親方であれば、卒業歴や資格取得日によって必要年数が変わる可能性があります。
一方、自己資本300万円の法人であれば、財務諸表だけで判断せず、資金調達能力による証明を検討できます。
この3つのケースに共通しているのは、一般的な条件を満たしていないように見えても、別の法定ルートを確認する余地があるという点です。
ただし、いずれも取得を保証するものではありません。
実際の審査では、ほかの許可要件も含めて総合的に確認されます。
3. 名義貸し・虚偽申請・契約分割を避ける
建設業許可の取得を急いでいても、名義貸しや虚偽申請などの違法な方法を選んではいけません。
例えば、別会社で勤務している有資格者の名前だけを借りて、自社の営業所技術者等として申請することは認められません。
また、実際には7年間しか経験がないのに、10年間の実務経験があるように書類を作成することも問題になります。
虚偽の内容で許可を取得した場合、許可取消しや刑事罰などの対象になる可能性があります。
許可取消しの理由によっては、その後5年間、欠格要件に該当する場合もあります。
さらに、許可を避けるために、本来800万円の一体的な内装工事を400万円ずつの2契約に分けるような行為にも注意が必要です。
建設業法施行令第1条の2では、正当な理由なく工事を分割した場合、原則として請負代金を合算して判断します。
ただし、すべての分割契約が違法というわけではなく、実際の工事内容や契約の経緯によって判断されます。
大切なのは、契約書の形式だけでなく、工事の実態に合った判断をすることですね。
2023年の制度改正は小規模事業者にどんな意味がある?
2023年7月の技術者要件緩和は、一定の技術検定第一次検定合格者について、対象業種の実務経験要件を見直した制度です。
私は、この改正には、小規模な建設事業者が技術者を確保する際の選択肢を広げる意味があると考えています。
これまで、対象業種について10年以上の実務経験を証明する必要があった方でも、一定の第一次検定合格歴と合格後の経験によって、別のルートを検討できる場合があります。
これは、資格取得に向けて学習を続けている人にとっても、経験を積む道筋を考えやすくする仕組みといえるでしょう。
ただし、改正の対象は限定されており、すべての業種で必要経験年数が短縮されたわけではありません。
また、技術者要件の緩和と経営業務の管理体制は別の条件です。
技術者要件を満たしても、経営管理体制や財産要件が不足していれば許可は取得できません。
私は、この点を混同しないことが、制度改正を正しく活用するための重要なポイントだと思います。
許可取得後も書類管理と更新が必要になる
建設業許可は、取得したら手続きがすべて終わるものではありません。
許可取得後も、毎事業年度終了後の決算変更届や、役員・営業所などに変更があった場合の届出が必要になります。
また、建設業許可の有効期間は5年間です。
継続して営業する場合は、期限内に更新申請を行う必要があります。
そのため、工事ごとに契約書、注文書、請求書などを整理しておく習慣が、許可取得後にも役立ちます。
例えば、工事名、施工内容、契約金額、工事期間、取引先などを管理しておけば、過去の実績を確認しやすくなります。
ただし、自分で作成した管理表だけで、実務経験を証明できるとは限りません。
元の契約書類と対応させて保管することが重要です。
筆者としては、建設業許可を単なる営業上の資格ではなく、事業の管理体制を整える機会として捉えることにも意味があると感じています。
許可を持っているだけで工事品質や経営の安定性が保証されるわけではありませんが、必要な体制を整えることは、取引先との信頼関係を築くための土台の一つになるでしょう。
なお、本記事では建設業法第3条・第7条・第8条、建設業法施行令第1条の2、建設業法施行規則第7条、国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」、自治体の建設業許可申請手引などを制度説明の基礎としています。
ただし、2026年11月5日時点で、各行政資料の最新版と改正履歴を本稿作成時に直接照合したものではありません。
また、本記事は行政書士などの有資格者による個別の専門家監修を受けたことを示すものではありません。
実際の申請では、最新の法令と申請先の手引を確認し、経歴や兼任条件などの判断が難しい場合は、建設業許可に詳しい行政書士や担当窓口へ相談することをおすすめします。
まとめ|建設業許可取得の近道は正規ルートの確認
建設業許可の取得に、法律上の条件を無視できる裏ワザはありません。
しかし、経営経験5年未満や預金500万円未満でも、法律で認められた別のルートによって取得できる場合があります。
特に確認したいのは、次のポイントです。
- 経営経験5年未満でも、一定の役員経験と直接補佐者による体制などを利用できる場合がある
- 技術者要件では、指定学科の卒業歴や国家資格、2023年の第一次検定合格者向け緩和を検討できる
- 一般建設業許可の財産要件は、自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力などで満たせる
- 個人事業主や一人親方でも、必要な条件を満たせば申請できる
- 新規申請の法定費用は、知事許可9万円、大臣許可15万円が基本となる
一方、名義貸し、実務経験の偽装、許可逃れを目的とした契約分割などは、重大なリスクにつながります。
まずは取得したい許可業種を決め、自分の経歴、資格、財務状況を整理してみましょう。
そのうえで、利用できる正規ルートと必要な証明資料を確認することが、無理のない許可取得への第一歩になります。
焦って特別な方法を探すよりも、法律で認められた選択肢を一つずつ確認することが、結果的に時間と手間を減らす近道になるのではないでしょうか。
よくある質問
建設業許可は経営経験が3年しかなくても取得できますか?
経営経験が3年でも、ほかの役員経験と直接補佐者による体制など、別の法定ルートを満たせば取得できる場合があります。
ただし、3年間の経営経験だけで自動的に認められるわけではありません。
本人の役員経験や担当業務、補佐者の経験などを確認する必要があります。
建設業許可の500万円は申請後も預金として残す必要がありますか?
一般建設業許可では、申請後も常に500万円以上の預金残高を維持することが一律に求められているわけではありません。
ただし、申請時には所定の財産要件を満たす必要があり、虚偽の証明は認められません。
また、許可取得後の材料費や外注費など、事業に必要な運転資金も考慮することが大切です。
建設業許可の申請は自分でもできますか?
建設業許可の申請は、要件を満たしていれば事業主本人や法人が自ら行うこともできます。
ただし、経営経験や実務経験の証明が複雑な場合は、資料の確認に時間がかかることがあります。
まずは申請先の最新の手引を確認し、必要に応じて建設業許可に詳しい行政書士へ相談するとよいでしょう。
執筆:結城 智秋(暮らしのアイデアライター)



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